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#12 投資初心者の失敗

投資

投資を始めてみたものの、思ったように資産が増えず、むしろマイナスになってしまい焦燥感に駆られた経験はありませんか。あるいは、日々の株価変動に一喜一憂し、仕事が手につかなくなってしまったことはないでしょうか。私自身、システムエンジニアとして論理的な思考には自信がありましたが、投資の世界に足を踏み入れた当初は、自身の感情という予測不能なエラーに翻弄されました。投資における最大の敵は、市場ではなく自分自身の心の中にいます。この記事では、多くの初心者が陥りがちな失敗パターンを分析し、感情に支配されずに資産形成を継続するための具体的な対策と、失敗から立ち直るための思考法を共有します。


1. 典型的な間違い

生活防衛資金を確保しないままのフルインベストメント

投資を始めると、複利の効果や将来のシミュレーション結果に魅了され、「1円でも多く、1日でも早く市場に投入したい」という焦りに駆られることがあります。その結果、本来確保しておくべき「生活防衛資金」までをも投資に回してしまうのが、初心者が陥る最も危険な失敗の一つです。

生活防衛資金とは、失業や病気、急な出費に備えるための現金のことで、一般的には生活費の6ヶ月から1年分程度が目安とされています。この安全装置がない状態で、手持ちの現金をすべて株式などのリスク資産に変えてしまうとどうなるでしょうか。市場が順調な時は良いのですが、暴落局面と個人の資金需要(車の故障や冠婚葬祭など)が重なった時、悲劇が起きます。 資産価値が大きく下がっているタイミングで、生活費のために泣く泣く株式を売却し、損失を確定させなければならなくなるのです。これは、長期投資において最も避けるべき「退場」への直行便です。システム運用においてバックアップなしで本番環境をいじるような危うさがあります。まずは守りを固めること。それが攻めに転じるための絶対条件です。

短期間で大きな利益を狙う「ギャンブルトレード」

「1年で資産を倍にしたい」「話題の銘柄で一発当てたい」。投資を始めたばかりの頃は、どうしても高いリターンに目がくらみがちです。特にSNSなどで短期間に億り人になったというような極端な成功事例を目にすると、自分も同じことができると錯覚してしまいます。

しかし、短期間で大きなリターンを狙うということは、それと同等の大きなリスクを引き受けることを意味します。値動きの激しい小型株への集中投資や、レバレッジ(借入)をかけた取引は、投資ではなく「投機」、つまりギャンブルに近い行為です。 初心者がプロのトレーダーやアルゴリズムがひしめく短期売買の世界で勝ち続けることは、極めて困難です。ビギナーズラックで一度や二度は勝てるかもしれませんが、再現性がありません。投資の本来の目的は、時間を味方につけてゆっくりと資産を育てることです。一攫千金を狙う思考は、結果として資産を大きく減らす最短ルートになりかねません。

仕組みを理解していない商品への投資

「銀行の窓口ですすめられたから」「ランキング上位だったから」「有名なインフルエンサーが良いと言っていたから」。このように、投資判断を他人に委ね、その商品がどのような仕組みで利益を生み出し、どのようなリスクを抱えているのかを理解せずに購入してしまうのも典型的な失敗です。

例えば、毎月分配型の投資信託などは、見た目の分配金利回りが高く魅力的に見えますが、実は元本を取り崩して分配金を出しているだけの「タコ足配当」であるケースが少なくありません。また、仕組みが複雑なデリバティブ商品などは、手数料が高額で、投資家にとって不利な設計になっていることもあります。 システム開発において仕様を理解せずにコードを書くことが許されないように、投資においても「自分が何に投資しているのか」を自分の言葉で説明できない商品には手を出すべきではありません。理解できないものへの投資は、想定外の事態が起きた時に適切な対応ができず、パニックに陥る原因となります。


2. 感情に負けない方法

プロスペクト理論がもたらす「損切り」の遅れ

人間には「利益を得る喜び」よりも「損失を被る痛み」の方を大きく感じるという心理的特性があります。これを行動経済学で「プロスペクト理論」と呼びます。例えば、1万円儲かった時の嬉しさよりも、1万円損した時の悔しさの方が、心理的なインパクトは約2倍強いと言われています。

この心理が投資においてどのような失敗を招くかというと、「含み益が出ているときは早く利益を確定させたくなる(利少)」一方で、「含み損が出ているときは損失を確定させるのが苦痛で、いつか戻ると信じて持ち続けてしまう(損大)」という行動パターンです。 結果として、わずかな利益で満足し、大きな損失を抱え込んでしまう「コツコツドカン」の状態に陥ります。この心理的なバグを克服するためには、自分の感情を信じず、事前に決めたルールに従って機械的に売買を行う仕組みが必要です。「〇%下がったら自動的に売却する」といった逆指値注文などを活用し、感情が介入する余地をなくすことが重要です。

※なお、長期のつみたて投資では「損切り」を基本的に行いません。市場の上下に惑わされず、コツコツ続けることが重要です。

暴落時のパニック売りを防ぐ思考法

市場は数年に一度、必ず大きな調整局面や暴落を迎えます。株価が連日下がり続け、ニュースでは「世界恐慌の再来か」といった悲観的な見出しが踊ります。自分の資産評価額が日々減っていくのを見ると、恐怖に支配され、「これ以上減る前にすべて現金化してしまおう」という衝動に駆られます。これが「狼狽売り」です。

しかし、歴史を振り返れば、優良な指数(インデックス)への投資であれば、暴落の後には必ず回復し、長期的には右肩上がりを続けてきました。暴落時に売るということは、バーゲンセールで安くなっている商品を捨ててしまうようなものです。 暴落時に冷静さを保つためには、長期的な視点を持つことが不可欠です。「今の暴落は、20年後の資産形成においては単なる誤差に過ぎない」と言い聞かせましょう。また、どうしても画面を見るのが辛い場合は、証券口座のアプリを一時的に削除するなど、情報から物理的に距離を置くことも有効な手段です。

感情を排除する「積立投資」の自動化

感情に左右されずに投資を続けるための最強のソリューションは、投資行動を「自動化」することです。毎月決まった日に、決まった金額を自動的に引き落として投資信託などを購入する「積立設定」を行えば、市場が上がろうが下がろうが、淡々と投資を継続できます。

この手法は「ドルコスト平均法」と呼ばれ、価格が高い時は少なく、安い時は多く購入することで、平均購入単価を平準化する効果があります。何より、投資のタイミングを自分で判断する必要がないため、「今買うべきか、待つべきか」という悩みから解放されます。 私はSEとして、ヒューマンエラーを防ぐにはシステムによる自動化が最も確実だと知っています。投資においても同じです。自分の意志力に頼るのではなく、継続せざるを得ない仕組みを作ってしまうこと。これが、感情という不安定な要素を投資から排除し、成功確率を高めるための最も合理的なアプローチです。


3. 情報に踊らされない

SNSの「爆益報告」というノイズ

Twitter(X)やInstagramなどのSNSを開けば、毎日のように「〇〇株で爆益」「資産〇億円達成」といったキラキラした報告が流れてきます。これらを見ていると、地道にインデックス投資を続けている自分が損をしているような気分になったり、焦りを感じたりすることがあります。

しかし、覚えておいてほしいのは、SNSでは「成功した側面」ばかりが強調されやすいということです。裏で抱えている多額の含み損や、過去の失敗については語られないことがほとんどです。また、中には投資詐欺への勧誘や、特定の銘柄を吊り上げるためのポジショントークも混ざっています。 他人の成果と自分を比較しても、百害あって一利なしです。投資の目的やリスク許容度、資金量は人それぞれ全く異なります。他人の爆益報告はエンターテインメントとして割り切り、自分の投資方針に影響を与えないように情報をフィルタリングするスキルが求められます。

ニュースメディアの「煽り」構造を理解する

金融メディアや経済ニュースもまた、初心者の心を揺さぶる要因となります。「株価暴落、終わりの始まりか」「バブル崩壊のカウントダウン」といったセンセーショナルな見出しは、人々の不安を煽り、クリック数を稼ぐための常套手段です。

メディアの目的は、必ずしも正しい投資情報を提供することではなく、多くの人の注目を集めることです。そのため、極端な悲観論や楽観論が取り上げられがちです。こうした情報にいちいち反応して売買を繰り返していては、手数料がかさむだけでなく、相場の波に翻弄されて資産を減らすだけです。 ニュースはあくまで「現在の事象」を伝えているに過ぎず、未来を予言しているわけではありません。「へえ、今はそういうムードなんだな」程度に客観的に受け止め、自分の長期的な投資計画を変更する理由にはしないという強い意志を持つことが大切です。

自分の「投資の軸」を持つことの重要性

情報過多の現代において、外部のノイズに踊らされない唯一の方法は、確固たる「自分の投資の軸」を持つことです。「なぜ投資をするのか(目的)」「いつまでにいくら必要なのか(目標)」「どの程度のリスクなら許容できるのか(手段)」を明確にしておく必要があります。

例えば、「20年後にサイドFIREするために、全世界株式インデックスファンドに毎月5万円積み立てる」という軸が決まっていれば、短期的に米国株が下がろうが、仮想通貨が暴騰しようが、自分のやるべきことは変わりません。 迷いが生じたときは、投資を始めた当初の計画書やメモに立ち返ってみてください。そこに書かれている論理的な計画こそが、感情的な迷いを払拭してくれる羅針盤となります。自分だけの憲法を持ち、それを遵守すること。それが、情報の洪水の中で溺れずに生き残るための浮き輪となります。


4. 再起するための改善習慣

失敗を「データ」として記録し分析する

投資で損失を出してしまった時、多くの人はその事実から目を背け、忘れようとします。しかし、失敗こそが最も貴重な学習材料です。システム開発においてバグが発生した時、ログを解析して原因を特定しなければ、また同じエラーが発生します。投資も全く同じです。

「なぜその銘柄を買ったのか」「なぜそのタイミングで売ったのか」「その時の心理状態はどうだったか」。これらを投資日誌として記録に残すことをおすすめします。記録を見返すことで、「自分は焦ると高値掴みをする癖がある」とか「損切りラインを決めずにエントリーしていた」といった自分の負けパターンが見えてきます。 失敗を単なる「損」で終わらせず、次の投資の精度を高めるための「データ」として活用できた時、その損失は将来への授業料へと変わります。客観的な分析こそが、再起への第一歩です。

ポートフォリオのリバランスと分散の徹底

大きな損失を出した後は、ポートフォリオ(資産配分)がいびつになっていることが多いです。特定のリスク資産の比率が高すぎたり、逆に現金の比率が低すぎたりしていないかを確認しましょう。

再起を図る際は、基本に立ち返り「分散投資」を徹底することが重要です。一つのカゴにすべての卵を盛るのではなく、株式、債券、現金、場合によっては不動産やゴールドなど、異なる値動きをする資産に分散させることで、リスクをコントロールします。 また、崩れた資産配分を元の比率に戻す「リバランス」も定期的に行いましょう。例えば、株式が増えすぎていたら一部を売って債券を買うなどして調整します。これにより、高値で売り安値で買うという行動が自然と実践でき、大怪我を防ぐポートフォリオを維持することができます。地味な作業ですが、このメンテナンスが長期的な生存率を高めます。

投資以外の「入金力」を高める

投資で出した損失を、無理に投資で取り返そうとしてはいけません。焦ってハイリスクな取引に手を出し、傷口を広げるのが関の山です。投資のリターンは市場環境に左右されますが、自分自身の労働による収入は、努力次第でコントロール可能です。

失敗から立ち直るための最も確実な方法は、本業でのスキルアップや副業によって「入金力」を高めることです。毎月の投資額を増やすことができれば、過去の損失をカバーするスピードも早まります。 私自身、SEとしてのスキルを磨き、単価を上げることで投資への入金力を高めてきました。人的資本(稼ぐ力)こそが、暴落にもインフレにも負けない最強のアセットです。相場に向き合う時間を少し減らし、自分自身に投資する時間を増やす。それが結果として、資産形成のゴールへの近道となるはずです。


まとめ

投資初心者の失敗は、知識不足や技術不足よりも、感情のコントロール不足から生じることがほとんどです。

  • 失敗の回避: 生活防衛資金を確保し、理解できる商品に長期で投資する。
  • メンタル管理: 暴落時はチャンスと捉え、自動積立で感情を排除する。
  • 情報リテラシー: SNSやニュースの煽りをスルーし、自分の投資軸を守る。
  • 再起の習慣: 失敗を記録・分析し、本業で入金力を高めて淡々と継続する。

失敗することは恥ずかしいことではありません。重要なのは、市場から退場せず、その失敗を糧にしてシステムを修正し続けることです。今日からまた、冷静にコツコツと積み上げていきましょう。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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